近年、お別れが多い。それだけ大人になって仕事を通して大勢の人と知り合えたからだろう。 寝てる間に逝った人がいる。 個性の強い人だった。 かれこれ3ヶ月ほど前のことだと言う。5月頃は大学の講義ばかりをしていたからかもしれない。こちらは全く知らされていなかった。 先日ふと気になって、「あの人はどうしていますか」と共通の仕事の人に尋ねたら、亡くなったと言うものだからしばし言葉を失った。 「会いに来なかったか」 「いいや、今の今まで知りませんでしたので」 亡くなっていることを知らされるまではその人は生きているも同然とはよく言ったものだ。そうか、あの人はもういないのか。 伝統的日本人的な死生観の絡む話だが、その人が亡くなる前日まで一緒に仕事をしていた人は彼の亡くなった夜、なぜか寝室に吊ってあった洗濯物がハタハタと揺れたなと思ったと言う。 「俺にはきっと、最期のお別れを言いに来たんだ」 きっとそうだろう。 The J.P.Getty Museum 事務所の道向かいに時計屋がある。 そこの店主が夏場、一晩だけ咲く花を電球で夜、照らしている。 「今晩見にこられたら」 そう声をかけてもらったので一晩しか咲かない花を観賞した。葉のふちから蕾(つぼみ)が出て良い香りを周囲に漂わせながら、一晩だけ咲く。多肉植物と言うか、生き物のような花だった。 「すぐに散るのに、どうして咲くんでしょうな」 その店主が独り言のように別れ際に呟いたが、なんとなく、人のようでなくもない。我々人間にとってもまた、百年の時は、一瞬に過ぎないのかもしれないのだから。